お気に入りの珈琲の香りが染み付いた部屋、適温に設定された室内、外から微かに聞こえる雑音は耳に優しい。
そして腕の中には愛しい恋人。
小柄な身体は自分の腕の中にすっぽりと収まってしまう。彼を自分の腕の檻で閉じ込めている様な感覚は何度味わっても確かな喜びを与えてくれる。
柔らかい癖毛に顔を埋めて旋毛にキスすると、妙な悲鳴を上げてセナ君が身をよじった。
「何するんですか、赤羽さん!」
「フー」
「ひゃあ!」
答える代わりに息を吹き掛けるとセナ君は真っ赤な顔で僕を睨み付けてくる。
そんな顔さえ愛らしく見えて僕は形の良い額にキスをした。
「赤羽さん!」
抗議の声に応えて笑うとセナ君はぐっと押し黙る。
僕は彼にベタベタに甘いが、彼も大概僕に甘い。
それを知っているからこうして二人の時は普段しない行動をとってみたりする。今みたいに悪戯したり、純粋に甘えたり。その度に可愛い反応を示してくれるものだから、嬉しくなってますます行為はエスカレート。
堪えられなくなったセナ君が拗ねたり怒ったりするまでそれは続いて、僕が謝ってまた元通り。
そんな他愛ないじゃれあいが何より心地良い。
沢井やコータローには呆れられる程僕は彼を愛してる。
彼とこうしている時間が長ければ長い程心は癒されていき、この時間が無ければ僕の心はささくれて行く。
「赤羽さん、僕をからかって楽しいですか!」
「フー、この上なく」
「いいかげん怒りますよ!」
「怒ってくれて構わないよ。君が僕に示してくれる感情なら何でも良いんだ」
僕の言葉に目を丸くするセナ君に笑いかけ、細い肩に額を乗せる。暖かい。この温度を失いたく無い。
一度知ってしまった喜びを失うなんて。
嗚呼、この思いはまるで。
「好きだよセナ君。ずっと、傍に居させてくれないか?」
「赤羽さん?」
「君が………否、何でも無い。もう少しこうさせていてくれ」
小さな身体を抱きしめる。頬を柔らかな髪がくすぐって、滑らかな肌が触れた。
「僕も。赤羽さんの傍に居させて下さい。ずっと」
背中に回された手に確かな力を感じ、更に強くセナ君を抱き締めた。
どうやら、君には依存性があるらしい
(それはまるで麻薬の様で、甘い果実の様で)
((好きすぎる7のお題))
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