日曜の朝っぱら、いつも爆睡している時間帯に枕もとの電話が鳴る。それにいつもの様に寝ぼけながらとって。 「もひもひー、みんなのアイドルくんれすよ……あー、うんすい?………んー寝てないよ。うん、寝てない。起きてるって…………はー、試合……そか、がんばれ……おれ眠いから、寝る。ん、寝てないよ。うん、お休み」 いつもの様に寝ぼけながら切って二度寝した。 何も考えずにいつも通りにとったこの行動、俺は後に深く後悔することとなる。 後から悔いると書いて後悔。昔の人は、本当に侮れない。 手にしていたボトルが地面に落ちる。ボコン、と間抜けな音がして、開いていた口から水が漏れていった。 じわじわと其れは地面に染みて、其処だけ色が濃くなっていく。 其れに比例してボトルの中身は減っていくが、今の俺にとってそんな事問題ではない。 其れ以上に重大な問題に直面していた。 「……王城と、泥門の……試合?」 「ああ、この間の日曜日に行われた」 「皆で偵察に行ったんスよ」 「珍しく阿含も来てたよな」 なー、とゴクウが周りのメンバーに同意を求め周囲もああ、と頷く。 正直阿含が偵察に行ったとかどうでも良い、そんな事は俺が直面している問題ではない。 「もう一度聞く、泥門と、何処の試合だって……?」 「だから、王城だ」 「そういや、が惚れてる子も王城だったっけ?」 王城だったっけって?王城だよ。王城ホワイトナイツのマネージャーだよ。 若菜ちゃん。未だに名前はわかってないし、ぶっちゃけ向こうは俺の事なんて知らないだろうし、何だよ純情ボーイって俺の事かよってくらいに純愛且つ片思いしちゃってますけど、って。 「ちくしょおおお!!!何で教えてくれなかったんだよおおお!!」 友達甲斐が無い!友達甲斐が無いぞ!もうお前らなんて友達だって思ってやるもんか! その場でじったんばったん暴れ出す俺に雲水は盛大なため息をついた。 「念の為言っておくが、俺は連絡したぞ」 「は?」 「偵察に行く日の朝、お前に連絡した。前の晩にも連絡したがお前出なかっただろう」 「え、ちょ、マジで?」 「ああ。当日の朝に連絡した時、漸く出たから『王城と泥門の試合を偵察に行く』と伝えたらがんばれとか言ってお前が電話切ったんだぞ」 雲水は淡々と其れだけ言う。呆れた様にこっちを見ているから、多分本当。 いや、雲水がこんな事で嘘つくとは思わないけど。 「え、マジ?」 「マジだ」 つまり、雲水が態々作ってくれたチャンスを俺が自分で潰しちゃったって事? あれ? 俺、馬鹿じゃん? 「のおおお!!!」 更に激しく暴れる俺に、雲水のため息も更に深く深くなった。 「今日も平和っスねー」 「本当だなー」 暢気な一休とゴクウの声が死ぬほど憎たらしく感じた、ある昼下がり。
#1 一方通行ラブロマンス |