#01 //

 夢だと思う。これこそ夢だ。リアルすぎる夢、一度見た事がある、あのリアル過ぎる夢。
 その筈なのに、時計の針は進んでいるし、料理は美味しそうな香りで私の嗅覚を刺激している。手を伸ばせば牛乳の入ったお気に入りのマグカップに触れられる。勿論其れを口に持っていって傾ければ、飲める。味も、する。
 現実に起こってもおかしくはない出来事の中、唯一夢じゃねえの!と疑いたくなる存在は、私の目の前で優雅に朝食を取っていた。
 ねえ、これ、夢だよね……?









 目が覚めた時、其処を確かに自分の部屋だと認識した。間違いない、ベッド、枕、カーテン、本棚、其の他色んなインテリア含め全て私の好みのもの。
 うとうととまどろみながら、暖かな朝の日差しに負けて二度寝の為に一度寝返り。
 「、朝だ」
 「んんー……後5分」
 「いい加減に起きないと、遅刻するよ。今日が初日だろう」
 初日?初日って何だろう。ゼミ?ゼミはもう始まってるよ、この間必死でレジュメ作ったもの。後期授業だって始まってからかなり経つし、初日ってなんだろう。
 ぼんやりする頭でそんな事を考える。
 もぞもぞと、ベッドの中で身体を動かし何とか覚醒しようと試みる。私に声をかけてきた人物はその様を見てだろう、大きくため息をついた。





 ………あれ?私に、声を、かける?





 勢い良く飛び起きる。一瞬で目が覚めた。
 私一人暮らしをしていたのに、何で誰かが私に声をかけてくるの?もしや泥棒?!態々起こしてくれるなんて親切な泥棒!混乱しながら声の主を見、私の混乱は臨界点を突破した。
 相手の顔を凝視したまま身動きが取れないでいる。
 「やっと目が覚めたのか。朝食は出来てるから、早く支度しておいで」
 フーと特徴的なため息をついて、『彼』は言うく。そして私は其の鮮やかな赤い目を見上げて頷いた。
 「うん、ごめんね。『お兄ちゃん』」
 極自然に其の言葉は口をついて出た。
 彼は少し口の端を上げて笑うと「急ぐように」と言い残し部屋を出て行った。
 疑問は確かにある。何が起こっているのか分からない。
 今の所分かっていることは2つ。



 朝起きたら目の前に『赤羽隼人』が居て、私は彼を『兄』と呼んだと言う事。
 「まだ夢、見てるの…?」
 頬をつねってみるがやっぱり痛くない、何て事は無くじわじわと痛みが其処から広がってくる。








 何がどうなっているのか分からない。
 分からないけれど、気付いている。





 これがあの夢から続いている出来事だと言う事を。









  Re start
 (何がどうなって何がどうねじれてしまったのだろう。私は何処に行けば良いのだろう)